外科医を10年しています。感染症の専門ではありませんが、数字を使って簡単に検討してみたいと思います。
はじめに
現在、新型コロナウイルス(COVID-19)の影響で緊急事態宣言が出ました。
新型コロナウイルスは、治療薬が無い上に、強力な感染力を持ち、一定の確率で重症化する危険なウイルスです。
中国でのひどい状況を聞き、さらに欧米での悲惨な状況を目の当たりにすると、日本での感染拡大が恐ろしく感じます。
感染コントロールが重要となりますが、みなさんはどれくらいの期間の【自粛】をイメージしていますでしょうか?
数週間?数か月?はたまた1年??
自粛、自粛のため、経済は停滞しており生活が困難となってきている人もいるのではないでしょうか?
アメリカも日本も世界的に、自粛に加え、経済政策が行われ、完全に個人事業主・企業を救おうとしています。
また、それに対して反対する人もいません。私も支援策には大いに賛成です。
では、どのくらい自粛が必要となるでしょうか?
計算してみましょう。
武漢の封鎖期間は?世界的なロックダウン
現在、外出禁止などの感染拡大を停止している国は欧米のみならず、アジア圏でもたくさんあります。
初期の頃は、暖かくなれば収束する、赤道付近の国々は安全だ、などと言われていましたが、シンガポールやフィリピンなどでも感染拡大により危険な状況です。
新型コロナウイルスで封鎖されていた武漢は、やっと先日4/8に封鎖が解除されました。
しかし、封鎖期間は2か月半に及びました。日本ではどうでしょうか?
日本の【自粛】
日本の外出には法的な強制力がありません。実際に、普段通りに出金する人が半数程度いると言われています。
そもそも自粛が必要な理由はなんでしょうか?
- 急激な感染拡大によるピークを抑える
- 感染拡大までの期間をあけることで、治療薬やワクチンの開発をすすめる
この2つが大きな理由でしょうか。
①急激な感染拡大によるピークを抑える
感染のピークが出来ると、医療体制側の観点から救える人を救えない、人工呼吸器の数やベッドが足りないなど考えられます。
緩やかな感染拡大であれば、あるほど救える人の絶対数は増えることが考えられます。
しかし、実際には治療薬が無い以上、治癒するかはその患者の免疫力次第となってしまいます。人工呼吸器や、最近はやりのECMOにも治癒効果はありません。人工呼吸器は、どちらかというと身体には負担がかかりますので、身体がウイルスを倒すまでの時間稼ぎという意味合いが強いです。そのため免疫力がウイルスを倒せないのであれば意味は薄くなります。
感染拡大のピークを遅らせれば、自粛の期間は長くなり、武漢の封鎖期間の2か月半では済まないのではないでしょうか?
②感染拡大までの期間をあけることで、治療薬やワクチンの開発をすすめる
こちらは出来るのであれば、かなり有効です。感染拡大を抑えつつ、治療薬を完成させる。
いろんな人が、世のため人のため時間を費やして治療薬の研究を行っているのではないでしょうか?
しかし、研究も行っている身として感じることは、研究にはかなり時間がかかります。数か月で治療薬が完成することはあり得ないと考えられます。
今ある治療薬を用いるのが最速であり、実際アビガンという既存の薬を使用しようとしています。
これが効果があれば良いので、期待していますが、どうでしょうか。。
どちらにしても自粛期間は数か月では済まない可能性が高いですね。。。
このパンデミックがどこで収束するのか、神のみぞ知るところかもしれませんが、治療薬が出来ず、集団免疫が出来て収束するには、という観点で計算してみました。
集団免疫が出来るまでの期間を計算してみた
日本での計算をしてみます。
集団免疫とは?
Wikipediaの画像がわかりやすかったので、持ってきました。下の図では、青が免疫の無い人、黄色が免疫のある人、赤が感染者となっています。
図でもわかりますが、免疫を持っている人がある一定の割合を超えると、感染が拡大しにくくなるということです。
実際には、新型コロナウイルス(COVID-19)がどのくらいの集団免疫が必要かはわかっていませんが、6-8割程度との説が多いように思われます。
今回は、6割で計算してみます。
日本の人口は1億2000万人です。その6割では、約7000万人となります。
7000万人が感染し、全員が免疫を持つと仮定します。
アメリカの感染者数が多くて1日2000人です。1日2000人で計算するとエグイ数字になるので、軽症者も含めると10倍以上いるとして、1日2万人感染すると仮定します。
7000万人に達するまでに、3500日。。
約9.5年。。。
少な目に考えて、こんな数字になってしまいました。
最後に
やはり、ワクチンや治療薬が出来ないと厳しいですね。。
武漢の今後の状況も気になるところです。
そもそも免疫が付くのかどうかもわかりません。未知のウイルスがこわいのは、今までの常識が通用するかわからないことです。
まずは、感染しないことが重要です。生き残ることが最優先です。幸い、みんなの意思統一が出来ていると思われます。
しかし、今後自粛が長期化した場合、恐怖から疲労へと変化していくことが予想されます。
みんなで出来ることを行っていきましょう。頑張って研究してくれている人がたくさんいます。治療薬かワクチンが出来る日が来ると思います。
人類がウイルスに勝てる未来があると思います。
信じてみんなで頑張りましょう。
追記:
素晴らしい記事を見つけました。
こちらの私の解釈を載せておきます。
まず、30日間の自粛を行っても、ピークを遅らせるだけで効果は乏しい。
そのため、今後どのような経過を辿るのが良いか。
①医療崩壊しないように自粛と自粛解除を何度も繰り返す
医療崩壊しないように自粛。
感染者が減少すれば自粛解除。
感染者が増えれば再度自粛する。
いわゆる感染のピークの山を抑えるという発想。
ただし、この想定では、1年間の半分は外出制限となる。。
②自粛で感染者数を減らした後に、徹底的に感染経路を追跡。かつ社会的距離を取ることを継続する。
長期で付き合っていくことを目指す方法ですね。
集団免疫を作ることを目標とせず、追跡できるまでの感染者数に減らして感染者の動向を完全に把握する。
感染者の数が増えず、横ばいで経過することが予想されています。
問題は、無症状のPCR偽陰性患者の把握が難しい点かと思います。いったん全員を完全に自宅待機、2か月程度必要かもしれません。
(2か月という数字は、感染が完治するまで2週間、家族が4人で移し合う可能性を考慮しての計算としました。)
完全に自宅待機を強いるのは、現状ではなかなか難しいかもしれません。
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