【これだけ知っていればOK】腹部レントゲンの読影【free airと二ボー以外にも知ってほしい所見5つ】

外科

はじめに

レントゲンの撮影は、日々の診療において比較的簡便に用いられている検査になります。しかし、胸部のレントゲンと違い、腹部レントゲンの所見について学ぶ機会がかなり少ないと思います。清書を読むのも良いですが、読むのに時間がかかりますよね。なので、簡単にまとめておきました。

腹部レントゲンでどんな所見に気を付けないといけないでしょうか。消化器の専門でなければ難しいことは多いと思います。腹部レントゲンは診断が難しいので、「CTを撮影しよう!」という医師も多いのではないかと感じます。

私は外科医として急性腹症の診療にも携わっており、腹部レントゲンを何度も見てきましたが、正直研修医の時は腹部レントゲンの読影が甘かったなと感じております。

free air(遊離ガス)と二ボー(液面形成像)はとても大事な所見ですが、それだけで終わっていないでしょうか?

今回はこんな方向けです。どちらかというと医療者(特に研修医など若手の医療者)向けです。

  • 腹部レントゲンの読影をしたことが無い、 自信がない
  • 腹部レントゲンのどこを見れば良いかわからない
  • 腹部レントゲンの価値がわからない(腹部CTだけで良いと感じる)
  • 腹部レントゲンの所見は、free airと二ボーしか知らない
  • 腹部レントゲンの大事な所だけ知りたい!

すぐに使える読影方法です。これだけで十分というところをまとめておきます。

腹部レントゲンの勉強になる本のリンクを載せておきますが、高いので詳しく学びたい人だけで良いかと思います。

ココまで読める!実践腹部単純X線診断―「透視力」を鍛えて「臨床推論」能力を高める

腹部単純X線写真の見かたABCDE 2枚並べてわかる読影の基本

腹部レントゲンを撮影するポイント【どんな時に必要?】

では、まず腹部レントゲンを撮影するポイントを考えます。

腹部レントゲンを確認すべき場合は、

  • 腹腔内消化管穿孔が疑われる場合     … free air(腹腔内遊離ガス)
  • 消化管閉塞(イレウス)が疑われる場合  … 二ボー(鏡面形成像)

が有名ですが、その他にも

  • 尿管結石、胆嚢結石、糞石などの結石性病変が疑われる場合
  • 動脈硬化などの石灰化病変が疑われる場合
  • 腸炎が疑われる場合 … 小腸内二ボー
  • 異物確認が疑われる場合 … ドレーンや人工弁などの挿入物の位置確認なども

あとこれだけ押さえておくとかなり有用です。

  • 虫垂炎などの局所炎症が疑われる場合 … 腸管内のガス分布異常

では、次はそれぞれについて説明していきます。

腹部レントゲンで知っていて欲しい所見

次に腹部レントゲンの読影で知っておいて欲しい所見について説明します。

①free air(腹腔内遊離ガス)

有名ですが、消化管穿孔を示唆する所見です。これが見つかれば異常です。すぐに外科医に連絡しましょう。まれに症状を伴わない消化管穿孔も存在し、free airが見つかることもありますが、本当に稀です。

読影はさほど難しくありませんが、胃泡(胃の中の空気)と間違えられることがあります。肝表面を見るとわかりやすいです。また、患者左側でも横隔膜直下に存在するものがfree airです。横隔膜は数mmの膜です。1cm以上離れたairは胃泡と考えてよいです。

②二ボー(鏡面形成像)

次は、二ボーです。二ボーはガス所見の下面が平行であることからわかりやすいと思います。しかし、二ボーを見たら「イレウスだ!」という方がたまにいます。ここでは、二ボーの解釈について触れておきます。二ボーの解釈がわかるだけで、かなり腹部レントゲンの読影ができるようになります。

二ボーとは、消化管内のガスと消化管内の水分が存在することで形成される像のことです。要するに、二ボーが存在するということは、腸管内ガスと腸液が貯留している状態だということです。腸管内ガスと腸液が貯留するには、腸の流れが良くないか、腸液がたくさん産生されるかということになります。

つまりどういう病気かというと、

  • 腸閉塞
  • 腸蠕動障害(麻痺性イレウスなど)
  • 腸の炎症(感染性腸炎やアレルギー性の腸炎など腸炎) など

が挙げられます。二ボーを診たら、このような腸の状態をイメージしていただきたいと思います。

③結石、石灰化など

これらは、レントゲンで直接見えるものです。前後関係が正面像ではわかりにくいこともあります。その場合は、側面も追加するとより立体での位置関係がつかめると思います。

実際レントゲンで確認できない結石もあります。胆嚢結石など成分によっては、わからない時があります。また、尿管結石など放射線技師さんに条件を(KUBに)変えて撮影するとわかりやすくなることもあります。技師さんに質問することもかなり役立つと思います。(技師さんは優しい人が多いですし、勉強熱心な方が多い印象ですので、ぼくも若い時はいっぱい教えていただきました。)

④異物確認(人工挿入物も含む)

外科医をしていると、腹腔内ドレーンやイレウス管、ENBDチューブなどいろいろな挿入物を扱います。これは、腹部レントゲンに限ったことではないですが、位置を確認するためによく使用します。解剖学的に動かない、骨盤や肋骨などを指標に確認するとわかりやすくてよいですよ。

⑤腸管ガス分布の異常

最後ですが、これが読めればかなり読影に自信がつくと思いますし、とても重要な所見だと思います。

この腸管ガス分布が見えないために腹部レントゲンが読めないと自信がない人が多いのではないかと思います。

ちなみに、腸管ガス像がわかりやすいのは、臥位で撮影するのが良いです。腸管の並びがわかりやすくなります。

大事なところから伝えます。腸管ガス分布をみる場合は、腸管ガスの無い場所がないか探します。

腸管ガスのある場所より、無い場所の方が重要です。

腸管ガスが無い場所は、腸内には腸液で満たされている状態です。腸管内が完全に虚脱している場合もありますが、圧倒的に腸液で満たされていることの方が多いです。

腸液で満たされているとはどういうことでしょうか。答えは、腸に炎症が起こっているということです。腸に炎症が起こっているとは、腸炎ということです。もしくは、こちらの方が怖い病気が多いですが、腸に炎症が波及している状態ということです。

例えば、虫垂炎を疑った場合に右下腹部にだけ腸管ガス像が認められない場合があります。それは虫垂炎の炎症が小腸にまで及んでしまい小腸内が炎症で産生された腸液で満たされており、レントゲンで右下腹部にだけ腸管ガスを認めないということになります。あとは、糞石を探して(見つからないことがほとんどですが)、虫垂炎の診断としてもよいです。レントゲンで糞石が見つかることはたまにあります。外科医でも見ている人は少ないとは思います。

その他には、胆嚢炎で右上腹部に無ガス野(腸管ガスが存在しない部分)があれば、(右上腹部に炎症がありそうだな)となります。

腸管内ガスのない部分(無ガス野)を探してみると、より腹部レントゲンから推測できるようになります。そうなると、これはCTが必要かなとわかるかもしれません。

逆に、腹部レントゲンでは腸管ガス像が全体にまんべんなくあれば、少し安心材料になります。

画像についても探して載せたいなと思っています。

まとめ

これだけでかなり腹部レントゲンが読めるようになります。読めるようになると、さらに診療に幅が広がります。またわからないところがあれば教えてください。

次は、腹部CTも解説したいと思っています。

急性腹症の腹部CTの読み方で勉強になるサイトが下記になります。演習問題形式になります。

急性腹症のCT演習問題
急性腹症のCT診断について、様々な症例の演習をわかりやすく解説します。

本も出ていたと思いましたが、見つからなかったので、見つかり次第紹介もしたいと思います。

→見つかりましたので、紹介します。第3版になって色が変わっており気付きませんでした。

上のサイトの本versionになります。サイトでは画像が見にくい、かつメモできないので、本での勉強もオススメです。良ければ下記リンクから参照してみてください。

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