はじめに
医学統計(医療統計)は、今まで勉強してこなかった場合難しいですよね。
ただ、論文発表する際はもちろん、論文を読む、理解するだけでも統計学を必要とします。
医学統計は、普通の統計とは少し異なる点もあります。なぜなら実際の患者さんのデータを利用する場合も多く、データ数が少なかったり、患者さんの不利益にならないようにしたりと制限が多いためです。
そのため医学統計にはさまざまな特徴があります。
そのあたりもきちんと理解しやすい本がありましたので、紹介させていただきます。
【オススメ】医学統計 初歩の本
『いまさら誰にも聞けない 医学統計の基礎のキソ①』
卒後10年目くらいの先輩に研究初期にオススメされた本です。
この本を執筆された浅井先生は麻酔科の教授で、かつJournal of Anaesthesiaのeditorでもあります。
この本は、好評で第3弾まで出されています。フランクな言葉遣いや挿絵などで堅苦しくなくわかりやすい本となっています。
上の本は、その第1弾です。①は正直簡単でした。大学でもある程度統計学の基礎は学んでいたからです。
私は、貸してもらった3冊の本をさらっと読みました。②からは少しずつ難しくなり知らない知識もありました。その後、振り返って①から読んでいくとさらに基礎のキソだけあって私の知識が抜けているところまで十分に記載されていました。
③まで読めば、医学統計で基本的にわからないところは無いのではないでしょうか?それどころか、抄読会での論文の評価まで出来るようになると思います。
『いまさら誰にも聞けない 医学統計の基礎のキソ①』
統計の本当の基礎の内容です。
- そもそもなぜ統計が必要?
- P値のPってなに?
- 有意差のつぎに知りたいこと
- 仮説検定と信頼区間の密接な関係
- 比較以外の統計って?
- 平均
- ばらつき、分布
- 得られた平均値から全体を見る
- 得られた確率から全体を見る
- P値の解釈注意点
10章からなります。
この本で、
- 仮説検定
- 帰無仮説
- P<0.05の意味
- P値の数字の意味
- 95%信頼区間
- 仮説検定と95%信頼区間の関係
- グループ間比較の有意差の有無
- グループ間の差の程度
- 平均値と中央値
- 分布結果
- 平均値と標準偏差からデータの分布の算出
- 有意差と実際の差
などなどが理解でき、説明できるようになると思います。
基礎ですが、一つでもわからないなと思う人にはオススメ出来ますね。
『いまさら誰にも聞けない 医学統計の基礎のキソ②』
副題が「結果の解釈が出来るようになろう!」となっており、こちらで基本的なことがだいたい理解できるようになります。
- 研究の種類
- 観察研究
- 介入研究
- 統計結果の読み取り方
- 相関
- 回帰
- 感度、特異度、陽性・陰性的中率
- 相対危険度とオッズ比
- NNT
この本を読んで理解できるようになることは、
- 観察研究と介入研究の違い
- 前向き研究と後ろ向き研究の違い
- 横断研究と縦断研究の違い
- ケース・コントロール研究とコホート研究は原因追究をする研究であること
- 対象者間比較と対象者内比較の違い
- クロスオーバー研究は対象者内研究であること
- 論文の結果の仮説検定と信頼区間の解釈
- さまざまな表
- さまざまなグラフ
- エラーバー
- 散布図
- 相関係数(ピアソンのアール)のプラス値とマイナス値の意味
- 回帰とはなにか
- 回帰直線の方程式での計算
- 感度、特異度、偽陽性、偽陰性の定義
- 陽性的中率、陰性的中率の定義
- 相対危険度とオッズ比の違い
- 相対危険度とオッズ比の値
- NNT(number needed to treat)の意味
急に難しいところも出てきたのではないでしょうか?
必要な部分だけでも理解したいものです。
『いまさら誰にも聞けない 医学統計の基礎のキソ③』
副題は「研究の質を評価できるようになろう!」です。
実際、論文を読んで結果がわかっても、それを実践に移すべきか、本当に正しい結果であるのか、を理解できないと役に立ちません。
また実際に論文を書く際にも注意しないといけないポイントがわかるようになっており、はっとさせられる内容だと思います。私も査読する際のポイントとしても未だに活用しています。
- 文章は理路整然と書かれているか?
- 研究の目的は明確か?
- 目的にあった研究がされているか?
- 対象者の選択は適切か?
- 対象者数は十分か?
- 盲検化比較検討がされているか?
- 統計の”ごまかし”を見破る!
- 「有意差あり」を適切に解釈する
- 「有意差なし」を適切に解釈する
- ”エビデンス研究”の選別
この本で理解できることは、
- エビデンスに基づく医療を実践するためには、論文の質の評価が必要であること
- 論文の質の評価にはさまざまなポイントがあること
- 主要評価項目と副次的評価項目の違い
- アンケート調査の回答率が結果の信頼性に影響すること
- 必要な研究対象者は研究によって異なること
- 治療結果の研究では、自然治癒、プラセボ効果、ホーソン効果が含まれる可能性があること
- プラセボ効果、ホーソン効果
- プラセボとは何か、またその使用目的
- 複数のP値が示された結果の解釈
- 標準偏差と標準誤差のどちらが結果の解釈に有用か
- 統計上の有意差≠臨床上の有意差
- P≧0.05の大まかな解釈
- パワー分析法の目的
まとめ
上記で紹介した
「いまさら誰にも聞けない 医学統計の基礎のキソ」シリーズは、具体例も多く読みやすく理解しやすい本となっています。医学統計について勉強したい初心者にはもってこいのオススメ本となっています。
1冊目で、統計の基礎を丁寧に解説されており、十分な理解が得られると思います。初歩の初歩といったところでしょうか。
2冊目で、医学統計を用いた結果の解釈が出来るようになります。論文の結果が何を意味しているのか、医学統計を使うのにはどうしたら良いのか、一歩を踏み出すための本ですね。
3冊目で、研究の質を評価し、エビデンスに基づく医療を実践できるようになります。最後に、論文の問題点と課題が見えてくることになります。だれしも論文にするため、一番良い結果を持ってきます。不正はしませんが、良く見えるような結果をうまく使うのです。そのあたりがわかるようになれば、さらなる理解が得られると思います。
この本の良いところは、小さく持ち運びやすい、さらに1冊3000円程度であることです。
下のリンクからもアマゾンで購入できるようにしておきました。
みなさんが医学統計を活用していただけたら幸いです。
いまさら誰にも聞けない医学統計の基礎のキソ 第1巻 まずは統計アレルギーを克服しよう! (Dr.あさいのこっそりマスターシリーズ)
いまさら誰にも聞けない医学統計の基礎のキソ 第2巻 結果の解釈ができるようになろう! (Dr.あさいのこっそりマスターシリーズ)
いまさら誰にも聞けない医学統計の基礎のキソ 第3巻 研究の質を評価できるようになろう! (Dr.あさいのこっそりマスターシリーズ)
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