【健康診断を受けるべき5つの理由】知ってほしい健康診断(検診)について【医師として本当に伝えたいこと】

外科

はじめに

今回は健康診断について記載したいと思います。最近みかけたネット上のコメントで下記のような情報をみたため、簡単にですが私の意見を記載したいと思います。

健康診断受けると、逆に身体を悪くするって聞いたよ
健康診断受けない方がいいよね

 

この方の聞いた意見が

『健康診断を受け、無駄に病気を見つけない方がいい。逆に身体を悪くすることもある』というものです。

その意見の根拠は、下記のようです。

  • 偽陽性の診断
  • X線被ばくによる癌の進行
  • 必要ない・治らない病気への治療のせいでQOLが低下する
  • 日本での健康診断の産業化の状況 など

 

正直、(なるほど。)と思いました。私も病院に行くことは嫌いな人間です。自分の身体に何かさせるのはイヤですよね。しかし、完全に理解するには難しすぎる。私が医学を勉強したいと思った一つの理由がこれです。理解できずに病気に立ち向かえないことがイヤだったということ、家族、自分が病気になったときに最善を尽くせるようにしたいということ。このことが私が医学を学んだきっかけの一部です。

では、健康診断についてはどうでしょうか。

結論から言います。ぜひ受けて欲しい!!

患者さんにも、もちろん家族にも、ぜひ受けて欲しいと伝えています。特に私はガン診療に携わっているからかもしれませんが、周りにも受けるように勧めています。

健康診断(検診)を受けるべき 5つの理由

まず健康診断とは、どういうものでしょうか。

健康診断けんこうしんだん)とは、診察および各種の検査で健康状態を評価することで健康の維持や疾患予防・早期発見に役立てるものである。健診(けんしん)、健康診査とも呼ばれる。

Wikipediaより引用

一般的には、 一般健康診断をイメージされると思います。

一般健康診断とは、雇用主が労働者に対し健康診断を実施しなければならないという法律も基づいて行われるものです。 雇用時と定期健康診断があります。

特に、ここでは生活習慣病ではなく、がん検診について絞ってみていきたいと思います。

厚生労働省HPのがん検診より引用

上記のようにがん検診の項目が並んでいます。

どれも有用な検査だと思います。どうしても、どの検査もデメリットや改善点はあると思いますが、良い検査だと思います。(正直に言いますと、胃がん検診の胃部エックス線検査だけは不要かなと思っています。内視鏡検査の方が断然良い検査だと思いますが、詳しくは後で述べます)

 

では、なぜそれほどまでに私ががん検診は受けるべきといえる理由について説明します。

それが、

  1. ガンを早期発見、治療が出来た時のメリットが大きい!
  2. 検査の侵襲の大きさがそこまで大きくない(受けやすい)
  3. かつ無駄な検査が入っていない(胃部エックス線だけは不要だと思っていますが)
  4. デメリット(リスク)がメリットに比べ極端に小さい
  5. もしガンが治療できないくらい進行していても今後の人生設計が出来る

 

説明します。

①ガンを早期発見、治療が出来た時のメリットが大きい!

まずは検診の目的でもある、ガンの早期発見、早期治療の件です。

本当にこれが一番の検診を受けるべき理由であります。

ガンは基本的に進行すると転移、再発の可能性があり、全身病(全身にガンが広がっており、根治が出来ない可能性が高い)と考えられています。そのため、手術だけではなく抗がん剤(化学療法)が必要となってきます。

その点、早期がんであれば、限りなく根治の可能性が広がります。根治出来ればガンは怖くありません。局所の病気である早期がんであれば、ほぼ治る病気です。

しかし、ガンは進行がんにならないと症状は出てきません。症状が出たときには、ガンは治らない可能性が高い病気です。早期発見、早期治療が出来るメリットこそ、最大の重要ポイントです。

ガンは2人に1人が生涯なる病気とされております。ガンを早期で治せることは、とても重要なことです。

②検査の侵襲の大きさがそこまで大きくない(受けやすい)

がん検診自体は、検診ですので出来るだけ侵襲の小さな検査で構成されております。内視鏡検査は少しハードルが上がるとは思いますが、これが現時点での最良の検査だと思いますので受けてもらうのが良いと思います。私は、親にも胃カメラ、大腸カメラを勧めています。

内診などもイヤな検査かもしれませんが、出来るだけ検査を受けていただくことが重要と思います。

検診の項目は、病院のための検査というものは無く、患者のための検査ばかりだと考えます。

③かつ無駄な検査が入っていない

検査にはどうしても偽陽性(間違って陽性となる)、偽陰性(間違って陰性となる、見逃し)があり得ます。

偽陽性であれば、さらなる検査を受け、ガンは無かったと診断されることでしょう。そのため、次に受けた検査は過剰であったともいえます。また、偽陰性であれば、がんの見逃しにつながります。

検診の感度、特異度はそれぞれ

④デメリット(リスク)がメリットに比べ極端に小さい

完璧な検査を開発しようと、研究者が頑張っている分野ですが、いまだ完璧な検査は存在しません。そのため、過剰検査や見逃しが出てくることもあり得ます。

しかし、過剰検査についてはそこまで大きな負担にはならないと思います。もし、検診で偽陽性となってCT検査を受けたとしても大した負担ではないと思います。被ばくのことを問題視する意見もありますが、CTを1回受ける被ばくの量は成人であれば、大きな問題はありません。CTを受けたため、ガンになったとは考えにくい確率です。それに比べれば、早期発見、早期治療のメリットが大きすぎます。

そのため、検査のデメリット(リスク)がメリットに比べかなり小さいと言えると思います。

⑤もしガンが治療できないくらい進行していても今後の人生設計が出来る

では、もし検診で進行がんが見つかった場合はどうでしょうか。進行がんが見つかれば、もう人生は終わりなのでしょうか?いや違います。癌の進行度や治療によって根治を目指すこともできます。もし、いわゆる末期(最近はそうは言いませんが)でも、ある程度残りの時間を計算することが出来ます。

人はいつかは死ぬ生き物です。 少し話はずれるかもしれませんが、大事な事だと思いますので書きます。人の人生に善し悪しはありませんので、個人的な意見として書きます。ご了承ください。

人は長ければ100年生きますが、平均寿命から言うと人生は80年程度です。医師をしていると、人の死にはたくさん出会いました。どのような死が良いのかと考えることも多々あります。人の死に良い悪いも無いですが、自分はどういう死に方をするのが理想であるか、どういう死に方をしたいかは考えることがあります。今の日本では、病気で死ぬ方が大半です。病気にも複数ありますが、簡単には急性の病気、慢性の病気、悪性疾患(ガン)に分類出来ると思います。それぞれについてはいつかは記事にしたいと思いますが、今回はガンについて触れたいと思います。先ほども書きましたが、ガンで死ぬまではある程度残りの時間が計算できると予想されます。ガンの進行は秒単位で進むものではなく、ステージⅣ(遠隔転移が存在し根治治療が難しい)でも数か月から数年単位で進行するため、化学療法などで進行を抑え長い人であれば10年生きることもあります。現在のこの医療環境では、ガンは死ぬまでの時間を有効に使える可能性があります。もちろん、痛みや治療の副作用などガンでの死の悪いところはありますが、急死する、もしくは長い期間をかけ全身の機能が失われていく慢性疾患と比較して、身体の大部分の機能を保ちながら時間を持って死ぬことができる病気です。

なにが言いたかったかというと、検診で進行がんが見つかったとしても、出来るだけ早く発見することで今後の治療方針、生き方について考え実行する時間が存在すると思います。それに症状緩和のための手術を行っておくことで、今後起こり得た痛みなどの症状から解放されることもあります。腫瘍が進行すると治療方針も選択肢が無くなっていきます。最近のがん医療は患者の生き方を尊重することが第一になっていると感じます。治療を受けたくない方には、無理やり治療を受けさすことも無いですし、出来るだけの情報から自分自身の人生を選択できるような環境だと思います。もちろん、医療者は経験からだいたいのガン患者の経過を知っていますので、その人の希望する生き方に出来るだけ添う提案もできるかと思います。

要するに、検診で進行がんが発見されても今後の人生において有意義な時間を過ごすことが出来ると考えます。検診で病気が見つかったために必要ない治療、希望しない治療を受ける必要は全くありません。医師の意見と合わなければセカンドオピニオンもあります。

まとめ

健康診断を受けるメリットは多大だと感じます。親にもいつも健康診断は受けているかと聞いています。

しかし、健康診断で必ずしも病気が見つけられるものでもありませんが、出来るだけ早期発見、早期治療で多くの方が納得のいく人生を歩んで欲しいと思います。人生を出来るだけ有意義に生きていただける方が増えることを祈るばかりです。

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